インスタグラムというツールを私が最初に触ったのは9年ぐらい前だったろうか。
ツールと表現したが、そう、インスタグラムは最初はツールだった。
なんか写真をレトロ風(しかも完成度が高い)に加工してくれるアプリがあるでー(まあ、登録が必要だけどな)という扱いだった。
それが今はインスタグラムはSNSだ。
若い子が使っていたかと思えばおっさんやおばさんも使うようになり、企業や団体も使うようになった。
インスタグラムが普及し始めた当初、ナショナルジオグラフィックで「インスタグラムは写真なのか?」という議論を扱っていたが、それはもうはるか昔の話で、インスタグラムが写真かどうか本気で議論する人間は今はいない時代になってしまった。
福岡県南部に位置する筑後市もインスタグラムアカウントを持っている。
アカウント名は「恋のくに筑後市インスタっ隊」である。
もう田舎臭いネーミングセンスが漂っている。
地方の草野球チームの応援団みたいなネーミングである。
隊員は試合の後、缶詰居酒屋で打ち上げしてそうな雰囲気だ。
私は付き合いもありこのアカウントをフォローしてみた。
どこかのタイミングでフォロー外してもいいかもと思っていたが、このアカウントがなかなかおもしろい投稿をするのだ。
よくある広告会社を真似したけど足元にも及んでない地方の投稿とは一線を画す。
どこどこで花が咲いたとかどこどこの店の食べ物が美味しいとかそういう地元目線のコアな情報が投稿される。
この筑後市のアカウント、投稿される情報が魅力的なのは当たり前として、さらに魅力的な、いや魅力がある。
それが、謎ポエムである!!
例えば
まだ新し目のカフェで一息。向かいに座る相手がいたらな。
とか
都会っぽさもあれば、田舎っぽさもある筑後市。フワフワ、あなたのもとへ飛んでいきたい♪
とかである。
まるで高校生活にうまく溶け込めない文学系の美少女とか世界の命運を一人で背負うことになった世界系ラノベのヒロインが書いたような文章だ。
これからは早朝のスタバで村上春樹を読むのはダサい。
読むべきはこの「恋のくに筑後市インスタっ隊」のポエムである。
昨日のお昼はあさひや。
*
私は単品で、彼はセット。
*
餃子いいなぁっておねだり
*
一つもらえた(*^^*)
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なんてことはないラーメン屋での一場面。
「私は単品で、彼はセット。」の下りがなにか意味深げに聞こえてしまう。
筑後ビレッジに週2回くらい来てくれる可愛い移動カフェ『ハナウタカフェ』。
「寒いね」って2人で言いながら、あったかコーヒー飲んじゃお♪
なんだこの「寒いね」って言い合える相手とハナウタカフェに行きたくなる感じはっ!
ここで登場するハナウタカフェとは筑後地域を中心にコーヒーやソーダなどを販売している移動式のカフェだ。
バレンタイン前にひいたピンク色の恋みくじは大吉♪
背中を押されて告白した昨日、結果はヒミツね!(*´艸`)
ちょいちょいちょーい!!
なーに一人でうるおい手に入れちゃってんのよ―!!と茶化したくなる投稿だ。
見てるこっちまで乙女になってくる不思議文章。
「今日はジャングルに行こうよ」
「いいね♪俺、黒のドラキュラにしようかな」
そんな予定を話して朝からウキウキ。
ここでジャングルと黒のドラキュラが登場。
まるで異世界転生もののような単語の羅列だが、これは筑後市にあるジャングルスープカレー屋の黒のドラキュラというメニューについて語っている。
このジャングルスープカレーは堀江貴文氏のホリエモン万博にも出店した。
雨の音を
聞きながら
紅茶を
八女茶を
鉱泉焼で
いただきながら
ゆっくりとした
幸せな
時間を
楽しみながら
過ごせる場所。
まるで雨音のような文章。
「紅茶を 八女茶を」とお茶を二つ登場させることで登場人物が二人であることを匂わす巧みな技術。
『恋してる?』マスターが聞いた。
『……してますよっ』
『じゃあ、君にはこのキッシュを。』
『…恋が叶いそうですね』
くぅーーーーーーーーーう!
こんなマスターほんとに世の中にいるのかい。
思わず川平慈英になってしまった。
嫌いになろうとした。
失敗した。
やっぱり大好きだった。
このままで
良いですか。
これはピザ屋を紹介する投稿。
もはやピザ屋関係ない。
ピザ出てこない。
くーっ!
無性にラーメンが食べたいよぅ!
そんな時、
はいはい、白龍軒ね
って分かってくれる、
付き合ってくれる、
あなたで、
良かった。
くぅーーーーーーーーーう!(本日2回目)
いやいや、やっぱりこのインスタアカウント技術が巧い。
なんせ平仮名が多い文章の中「白龍軒」という漢字を引き立たせることに成功している。
ちなみにこういったポエムは早朝の5時に投稿されている。
あさっぱらの5時にこんな文章を投稿するのは「耳をすませば」の雫のような頑張り屋さんに違いないっっ!!
出逢って
数年経つけど
まだ
あなたの笑顔に見惚れてしまうし
まだ
あなたの声にドキドキしてしまうのよ。
また
いつものウッディで
ご飯を食べながら。
なんだこの卒業式間近の少女の心みたいな文章は。
しかもウッディの破壊力やばい。
ウッディってトイ・ストーリーですか!?
それともひぐらしのなく頃にですか!!??
それとも彼氏の名前がウッディさんなんですかーーーー!!!???
※筑後市のカフェレストランの名前です。
ありがとう
さよなら。
遠くに旅立っても、
『さざなみ』で
みんなでモツ鍋食べた
あの時間のことは
きっと忘れない。
エヴァンゲリオンの最終回を連想させる始まり。
「旅立ち」と「さざなみ」という単語からはリチャード・カーティス監督の「アバウト・タイム」という映画で主人公が父と一緒に浜辺を歩いているシーンが自然と浮かぶ。
「あのイーハトーヴォのすきとおった風…」のような髪と頬を優しく撫でるこの文章にいきなり「モツ鍋」という単語が登場する!
この破壊力はヤバい!!
美少女アイドル声優が「好きな食べ物はモツ鍋です」と言うくらいインパクトがある。
だけど、なに、このモツ鍋が食べたくなる投稿は(トクン)
とまあこんな感じでポエムが投稿されているのだ。
調べたところこのアカウントが始まってしばらくはポエムが投稿されていなかった。
どうやら2017年4月頃からポエムが始まっている。
ということは、2017年4月から筑後市観光協会に新海誠的美少女が就職したのだと思われる。
そんな筑後市観光協会は筑後市の観光のことで困ったら親身に応えてくれる団体なので、ぜひ困ったことがあれば下記の公式ホームページよりお問合せ願いたい。
一般社団法人筑後市観光協会
恋のくに筑後市インスタっ隊( @koinokuni_chikugo_instattai )
K.Takeshita